2010年12月24日金曜日

ピグメントの解説記事 ミゲル・ヒメネス

 たくさんのモデラーがピグメント(顔料)やパステルを使用していますが、それらの正しい使い方が理解できていない方も少なくありません:疑問を抱きながら使っているモデラーも多いのです。この記事はピグメントの使用法を紹介するのみならず、ピグメントとは何か、どこに起源をもつのかについても明らかにするものです。さぁピグメントの秘密を探りましょう。


ピグメントって何?

ピグメントとはもともと顔料つまり色素の粉末のことで、さまざまな色の絵の具を製造するための原料です。あらゆる種類の絵の具や着色剤はこの粉末から作られます。エナメル塗料、アクリル塗料、パステル、チョーク、色鉛筆、油絵の具などなど。
この色素の粉末を塗料として成立させるためには、何かしらの定着材が必要になります。これは製品によって様々です。オイルの一種(リンシード油)で練ると油絵の具になり、アラブ産のゴムの一種で固めるとパステル・チョークになります。でも中に入っている色素の粉末はもともと同じものです。
ピグメントの粉末は様々な鉱物から抽出されます。例えば、マグネシウムとかチタニウム、亜鉛、その他土や岩石などからです。

ピグメントの品質は2つの要素から決まります。
1.ピグメントの純度。これは原料の鉱物に起因します。
2.粉末粒子の細かさ。ピグメントの粉末が荒かったり大きな粒や破片が残っていたりすると品質は台無しです。これは製造者に責任があります。
サンドペーパーを使用して作った代用ピグメントは、パステルを練り固めるための添加物が混ざっているので、余り良い品質とはいえません。純粋ピグメントと粉にしたパステルは同じものではないのです。


模型製作におけるピグメント使用の起源
粉末による塗装法はずっと前から模型に使用されてきました。バーリンデンを始めとする先駆者は素朴な方法ながら既に粉末を車輌のウェザリングに使用しています。この塗装法自体は新しいものではなく、昔からホコリをかぶった状態の表現に用いられてきました。

私もかつてはホコリ表現に母親の化粧用の粉を拝借したりしましたが、その結果は彼女を怒らせただけの惨めなものでした。その教訓から次の進化を得ました。パステルチョークです。これをスティック状のパステルをサンドペーパーにこすりつけて、模型に適した乾いた粉末にしたのです。
しかし、その結果は満足のいくものではありませんでした。そこで私は自分自身で模型用ピグメントを製造することにしたのです。
現在、ピグメントは私たちのこのホビーの道具としてすっかり定着しました。多くのモデラーがこれを愛用し、リアルな仕上げのために欠かせないものになりました。


ピグメントの秘密は何?
画材店に行くとマゼンタ(赤色の一種)の顔料を購入できます。しかし画材店で売っているのは美術用の基本色のみで、そのままでは模型の車輌や航空機に使用することはできません。どぎつい黄色や青色でホコリや泥を作ることはできないのです。要するにピグメントの秘密は、その物としての性質の中にあるのではなく、必要な効果を得るための色を正確に調合することにあるのです。これは実に難しく、もし調合が誤っていると結果は悲惨なものになります。
常に心に留めていただきたいのは、大切なのは使用すべき色なのだということです。またピグメントの品質が高いものでなければならないのは勿論です。

どのような効果が得られるの?
ピグメントを使用して得られる効果は実にさまざまです。ホコリ、乾燥又は湿った泥、サビ、すす、灰、土、雨だれ等等・・・。
挙げればきりがありませんが、そのうち代表的なテクニックを以下に紹介します。


使い方は簡単なの?

ピグメントを使った塗装テクニックは実に様々で、簡単なものもあれば非常に複雑なものもあります。しかし概して作業時間は短くモデラーは満足できる結果をすぐに得られます。ピグメントを使用すれば、以前は手間のかかったホコリや泥の表現を、はるかに短時間で行うことができます。あまり製作に時間を取れないモデラーや、自分の作品のレベルアップを願っている初心者モデラーにはうってつけの方法です。 一方エキスパート・モデラー諸氏にとっては、ピグメントによる塗装法が自分のお気に入りの塗装テクニックの一つになることは間違いありません。


ピグメントによる塗装法の基本テクニックは?

 基本テクニックには2種類あります:
1. そのまま使用する
2. 他の素材と組み合わせて使用する
そのまま使用する場合、筆とピグメントを使って以下のような表現ができます。

砂漠のホコリ:
サンド系のピグメントを表面に直接まぶします。
この際の表面は、つや消し塗装されている方が定着しやすくなります。










煤(すす):
ピグメントのブラックを直接使用します。











サビの浮いた表面:
排気管や錆びた車輌に。
明・中・暗の三色を組み合わせると、たいへん効果的です。










錆びたキャタピラ:
複数のサビ色のピグメントを使用すれば、車輌のキャタピラトラックに素晴らしい効果を加えられます。









航空機モデルのホコリ表現:
グレーとブラウンの幾つかの組み合わせを使用して、航空機各部の微妙な表現の違いを再現できます。





















街のホコリ:
破壊された街のホコリを表現する最も良い方法は、直接ピグメントをまぶすことです。
ピグメントを他の様々な素材と組み合わせて、さらに表現のバラエティを広げることができます。




乾いた土ホコリ(ヨーロッパ地方):
車輌に付着した土が乾燥すると、前述したデザートダストによる表現とは異なった状態になります。
この土の表現にはこげ茶色系のピグメントを使用します。
筆でピグメントを表面にまぶし、専用溶剤(又はペトロールやエナメル/アクリルシンナー)を数滴加えます。この溶剤が粉末の定着を助けます。





































灰:白と黒のピグメントを使用して、ホイールのゴムや木の燃えかすを表現できます。
ここでも数滴の溶剤を加えて定着させます。










乾いた泥:
これを表現するには、茶色系のピグメントに少量の石膏の粉とアクリルレジンを混ぜ合わせます。

このペースト状の混合物を使い古した筆で表面に塗りつけます。

塗りつけたら乾くまで注意深く観察してください。たまに望ましくない状態に固まってしまうことがあります。

アクリルレジン添加剤の定着力は強力です。いったん乾いたら、もはや泥を取り除くことはできません。


濡れた泥:
多めの茶色と黒のピグメントとクリアーと石膏の粉を混ぜれば、たいへんリアルな泥を再現できます。

ボリューム感を出したい時は、アクリルレジン添加剤を加えます。

本物の土や粒の細かい砂、欲する表現によっては小石などを混ぜても面白いでしょう。




サビの浮いた広い面:広い面にサビが浮いているような場合、その酸化した表面はざらざらしていてツヤがありません。ピグメントを使用するとこのざらざらした表面を簡単に再現できます。この場合、ピグメントを定着させる溶剤として、テレピンの代わりにアルコールを使用すると、成分が完全に揮発してより好ましい表面を得ることができます。

レインマーク(雨だれ):レインマークを表現する手軽な方法は、ごく少量のピグメントを水で溶いて使用することです。この方がエナメルのバフを薄めてレインマークを表現するやり方よりもコントロールが容易です。

パテの着色:時として着色したパテは興味深い効果を生みます。好みの色のピグメントをパテの溶剤(多くの場合ラッカーシンナー)とともに直接練りこんでください。

石膏の着色:純粋色素であるピグメントは石膏を着色するのに最適です。例えば自分の好みの赤茶色でレンガ建築物を作ることができます(完成後、角がポロッと崩れても白い石膏が見えません)。レンガだけでなく、石膏を溶く際に様々な色のピグメントを加えて、石やコンクリートなども好みの色で作り出すことができます。ピグメントが石膏の成分を変化させることはありませんし、水との混合比もそのままで大丈夫です。



フィギュアへの使用:
ピグメントは、兵士や作業員のユニフォームについた泥やホコリを表現するもっとも簡単で効果的な方法です。
ピグメントをまぶして、専用溶剤で定着させてください。















最後に、これまでの私の作品で使用したピグメントの様々な使用例を挙げておきます。これらはすぐにあなたのモデルのタイヤホイールや燃料タンク、座席シート、ガラス、幌に付着したホコリや泥の表現に応用していただけます。これらの写真からピグメントを使った表現は無数にあり、そのリアルな効果がお分りいただけるのではないかと思います。

(よい写真を準備しています。もうじき貼ります。)




ミゲル・ヒメネス,2003年5月
(協力 ディエゴ・ロペス&アントニオ・マルティン・ティヨ)

2010年11月16日火曜日

MP35-133 ソ連戦車煙幕タンク 参考画像

MP35-133 ソ連戦車煙幕タンク









無限無軌道様より、「MP35-133 ソ連戦車煙幕タンク」についての解説をいただきましたので紹介します。解説は特にT-34戦車系列についてのものです。

 
 
 
 

1.煙幕噴出口
2.点火用電源ソケット


この缶は車体リアパネルに取り付けるようになっています。

























車体後部に取り付けられたやや小さなタンクは、車外燃料タンクです。
取り付けラックは煙幕タンクと共用のようです。よく見ると、このラックには投棄機構が付いてます。
リアパネル、左右に伸びるパイプはその為のロッドを通す管です。
 






 



但しこの3枚の画像で示したラック、112工場製のT-34特有のちょっとレアなタイプのようです。
リアパネルは大変な重量物ですから、開いた際にラックを変形させてしまう事例があったのかも知れません。







そのような訳で、こういう取外し式のラックがより一般的です。

上から見るとこんな感じ。何やら円筒状の突起が付いてます。
左右共通で使えるように、突起取付のネジ穴が両側に用意してあります。



勿論、投棄機構は付いてます。ラックのフックを掴む鉤爪機構は、リアパネルのネジ頭についています。
だから先の画像では回転して横をむいていた、と。煙幕缶にもバリエーションがあって、興味が尽きません。











T-34も戦後改修でドラム缶増槽を背負うようになります。
T-54等と使い勝手を揃える配慮と思われます。

そうなると車体後部に煙幕缶を置けなくなるので、SU-100の場合、煙幕缶ラックはこちらへ移ります。
取付ボルトの頭に注意。ストラップをかける豚の尻尾のようなフックが付いています。
 

T-34だと砲塔旋回の邪魔になるため、SU-100と同じ場所に置くことはできません。
そこで車体左側面の筒型燃料缶ラックを1組撤去して置かれます。

ですので、T-34の左側筒型燃料缶がチグハグな高さで付いているのは、
実はこの煙幕缶ラックを利用しているためなのです。


しかし煙幕缶とドラム缶増槽の両方を取り付けられるラックも存在します。
・・・リアパネルを開いた際に変形させる危険性は飛躍的に高まりますが・・・
この複合型ラックは滅多に見掛けません。

戦後のポーランド製T-34/85。ラックは先と同様の根本解決型です。


 
ポーランドM2のラック画像です。先の戦車全体像をもう1度見直してください。
あの車体側面には、この外した増槽ラックが裏返しで転がしてあります。
取付にリアパネルのボルトを利用する為、結構凝った形状です。

似た画像ですが、この2枚でラックの上下両端に爪の付いているのが判ると思います。
どうやらこのラック、ストラップで締め付けるのではなく直接ドラム缶を掴む機構のようです。
上の戦後型T-34の車体後部増加タンクのホルダーのように、
ドラム缶にはプレスではなくI型断面のリングを巻いて補強したタイプがあります。
このリング部を掴めばストラップは不要という訳です。


戦後T-34を生産したポーランドには、T-34/85M2というユニークなモデルがあります。
シュノーケルを使用する潜水渡河機能を備えたこのM2、ラックは先と同様の根本解決型です。
 
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2010年11月27日 追加説明をいただきましたので、掲載します。


ASU-85の車体後部に煙幕タンクが見えます。
エンジンデッキ上には燃料タンクが載っています。



デッキ後端に取り付けられた燃料タンク。ラックは煙幕タンクと共通です。




T-34/85車体後部に煙幕タンクが見えます。
ドラム缶の燃料タンクに挟まれて、投棄は難しそうです。
いつまでもモクモクやっていたんでは僚車の視界は妨げるし、部隊の位置を晒すしで、使用後は速やかに煙を離したい筈ですが・・・。


2010年11月6日土曜日

marutake international blog

いつもマルタケインターナショナル・ホームページご覧いただき有難うございます。
こちらのブログをお借りして、ホームページ向けコンテンツを補完していきます。